2022年2月1日火曜日

掲載論文解説:トマトにおける光受容体フィトクロム変異体は暑さに強い表現型を示す

 日本語解説

Abdellatif et al. (2022) Int J Mol Sci 23, 1681

ポイント

1.トマト光受容体フィトクロム変異体phyA, phyB1B2では、栄養成長期において、暑さに強い表現型を示す。

2.通常トマトの花粉は暑くなると稔性が下がるが、変異体では野生型よりも稔性が高い。ただ、着果はそれほど変わっていなかった。

3.栄養成長期において耐暑性が付与されることから、今後のゲノム編集のターゲットとしての利用も期待できる。


論文内容

温暖化の影響もあり、熱ストレスが世界的な問題となってきている。特に農業という視点から、熱ストレスは植物の成長を阻害するとともに、収量の減少を引き起こす。本研究では、トマトフィトクロム変異体phyA, phyB1B2が栄養成長期に高温耐性を示すことを明らかにした。夏場のガラス温室は、気温が50℃以上に達することも少なくない状況ですが、そのようなガラス温室内では通常のトマトは萎れたり、弱ってきたりしますが、phyA, phyB1B2変異体は下図のように良好な生育をみせました。これは、高温時における膜の安定性と水分保持が強化されたためと考えられます。


一方で、生殖成長期において、高温時における花粉の稔性が変異体で上がってはいたものの、着果率に関しては、野生型と大きな違いは見られなかった。

これらのことから、phyA, phyB1B2変異体は栄養成長期に高温耐性を示すことが明らかとなった。夏場をこの変異体で乗り切って、秋で実をつけさせるということを行えば、この変異体が有効利用できるのではないかと思われる。もともと変異体なので、ゲノム編集などで変異を導入するといった使い方もあると考えられる。

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