2011年11月9日水曜日

Book chapter

Springerから発刊される
"Abiotic Stress Response in Plants"
http://www.springer.com/life+sciences/plant+sciences/book/978-1-4614-0633-4
のChapter 13を執筆しました。

Chapter 13. Abiotic Stress and Role of Salicylic Acid in Plants
Miyuki Hara, Jun Furukawa, Aiko Sato, Tsuyoshi Mizoguchi, Kenji Miura
各々方、執筆のご協力ありがとうございます。
良かったら読んでみてください。

2011年10月28日金曜日

若手の会

新学術領域の若手の会に参加しました。最近の大学院生はみんなしっかりした発表をしていますね。当研究室のS君も頑張ってくれました。

今回一番の収穫は、無細胞系でタンパク質を大量に合成する方法を教えてもらえることになったことですかね。今度四国に習いに行く予定です。


ホテルからの一コマ。



2011年10月17日月曜日


Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Sep 27;108(39):16475-80. Epub 2011 Sep 19.

Integration of low temperature and light signaling during cold acclimation response in Arabidopsis.



ある種の植物は凍結しないレベルの低温に応答して凍結耐性を上昇させるが、この過程を低温順化とよぶ。この低温順化には光が必要であるが、どのように光と低温シグナルがクロストークを行って凍結耐性を上昇させるかについてはほとんど分かっていない。この研究ではHY5(光シグナルに関わる転写因子)の転写レベルが低温によって調節されていることを明らかにした。この調節はCBF(低温シグナルの重要な転写因子)ABA(アブシジン酸)非依存的な経路であった。また、HY5タンパク質はCOP1(ユビキチンE3リガーゼ)によって調節されるが、低温時においてはCOP1が核外へ移行することでHY5が安定化することが明らかになった。更にHY5Z-boxや他のcis因子に作用することで、低温誘導性遺伝子を正に調節していることが明らかとなった。これらの証拠は、低温応答におけるHY5, COP1, Z-boxの機能を明らかにし、低温シグナルと光シグナルのクロストークに関する知見を提供することとなる。また、こうした複雑な分子機構を発達させることで、自然環境の変動に適応していることが明らかとなった。


HY5自体も低温によって誘導されるから、これを担う何かが必要となってくるわけである。CBFが関与していないから、何かほかの転写因子が必要ということ。この辺りの調節機構が分かれば、更に面白くなる。

2011年7月8日金曜日

Plantaへの掲載

結構やっつけ仕事で出した論文ですが、無事Plantaに掲載されることになりました。

Title:
Increased tolerance to salt stress in the phosphate-accumulating Arabidopsis mutants siz1 and pho2
Miura K, Sato A, Ohta M, Furukawa J

IF2010を見ましたが、Plantaでなくて、Mol Plantに出しても良かったかとも思う今日この頃です。
2.5から4.2に急上昇です。さすが中国パワーという気もしないでもないですが。
研究の推進にご尽力頂き、誠にありがとうございました。
あと、研究を手伝って下さった学生バイトの方々にも感謝いたします。

2011年5月25日水曜日

Alternative splicingによって自己制御

Nat Commun. 2011;2:303.
Two splice variants of the IDD14 transcription factor competitively form nonfunctional heterodimers which may regulate starch metabolism.
Department of Chemistry, Seoul National University, Seoul 151-742, Korea.

 転写産物のalternative splicingは真核生物において、多様な転写産物及びタンパク質の創出に重要な役割を担っている。本研究では、シロイヌナズナIDD14 転写因子のalternative splicingによって競合阻害を引き起こすタンパク質が生成され、デンプン合成の調節に寄与していることが明らかにされた。IDD14IDD14α(機能をもつ)spliced variantであるIDD14βalternative splicingによって生成される。IDD14βは特に低温条件においてより多く生成されるが、IDD14βDNA結合ドメインを欠いているがIDD14αとヘテロダイマーを形成することが可能である。このIDD14α-IDD14βヘテロダイマーはQQS (Qua-Quine Starch、デンプン蓄積の調節遺伝子)プロモーター領域への結合能が低下していた。IDD14α過剰発現植物ではQQS過剰発現植物と同様に、成長阻害及び淡緑色を示した。一方でIDD14βを過剰発現させるとIDD14αで見られた表現型が正常に戻った。このことから、IDD14におけるalternative splicingは自己制御ループを形成し、低温に応答したデンプンの蓄積調節に関わっていることが示唆された。


最近発刊されたNature Communicationsの論文。Alternative splicingによって、βがαを低温時に調節するという現象で、興味深い論文。In silicoでalternative splicingされる転写因子が300近くあるのだが、その中でどうやってIDD14をピックアップしたのか?は書かれていない。神の手?

2011年3月29日火曜日

Plant Journalへ掲載決定

2月頭にresubmissionをしていたのですが、アクセプトの通知が来ました。いやぁ、良かったです。
研究及び論文作成に当たり御助力頂きました諸先生、学生さんに感謝いたします。

今、研究トピックスを作成中なので、出来上がったらホームページにでも掲載しようかと思います。

2011年3月26日土曜日

震災から2週間

東北地方太平洋沖地震に伴う震災で被災された皆様とそのご家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。

早いもので2週間が過ぎました。まだ余震と原発の不安が拭いきれていないのですが、少しずつこちらも復旧しつつあります。こういう時は風評がすごい勢いとなってしまいますので、しっかりと情報を得るよう心掛けることが大切だと思います。つくばでも以下のホーム―ページで放射能の値を知ることが可能です。

筑波大学:http://www.tsukuba.ac.jp/topics/20110317175459.html
産総研:http://www.aist.go.jp/taisaku/ja/measurement/index.html

この時期、特に花粉が多いので黄色いものがたまったりすることがあるかもしれませんが、これはスギ花粉であって放射能物質ではありません。スギ花粉を集めたものをもらったことがあるのですが(実験用)やっぱり黄色です。ニュースでそういうことを言っていたので、あまりにも過敏にならないよう気をつけないといけないです。

2011年2月23日水曜日

謝恩会

先日、植物生理分野の合同謝恩会がありました。
ひとまず、博士論文、修士論文提出お疲れ様です。
卒論生は発表が差し迫っていますが。





Nさん、修論お疲れ様です。

Sさん、写真ありがとう。

Ca2+/カルモジュリンがサリチル酸による植物免疫応答の調節に関わる

ちょっと前の論文になりますが、

Nature. 2009 Feb 26;457(7233):1154-8.
Ca2+/calmodulin regulates salicylic-acid-mediated plant immunity.
Center for Integrated Biotechnology and Department of Horticulture, Washington State University, Pullman, Washington 99164-6414, USA.

植物-病原菌相互作用時における細胞内カルシウムの一過的変動は部位的(LAR; local acquired resistance)及び全身獲得抵抗性(SAR; systemic acquired resistance)を引き起こすのに重要な現象である。サリチル酸はこの両方の抵抗性応答に重要なメッセンジャーである。また植物-病原菌相互作用時においてカルシウムの上昇が引き起こされることが、これまでの研究から明らかになっている。しかし、どのようにしてカルシウムシグナルがサリチル酸レベルを調節しているかについては分かっていなかった。筆者らはこのカルシウムシグナルとサリチル酸依存的免疫応答を結ぶメカニズムとして、カルモジュリン、AtSR1(別名CAMTA3、カルモジュリン結合型転写因子)及びEDS1(サリチル酸レベルを調節因子)が関わっていることを明らかにした。AtSR1の変異株では恒常的病原菌抵抗性及びサリチル酸レベルの上昇がみられたことから、AtSR1は植物免疫機構の負の制御因子であると示唆される。このことはサリチル酸蓄積や病原菌抵抗性変異株との交配による遺伝的上位検定(epistasis analysis)により確認された。また筆者らはAtSR1EDS1プロモーターに結合し、EDS1の発現抑制に関わっていることを明らかにした。さらにAtSR1とカルシウム/カルモジュリンの結合は抵抗性抑制に必要であり、カルシウム/カルモジュリンがAtSR1の機能調節に直接的に関わっていることが示された。これらの結果から、これまで分かっていなかったカルシウムシグナルによるサリチル酸レベル調節機構が明らかになった。


このAtSR1は、実はCAMTA3なのですよね。CAMTA3はDREB1/CBFを調節して低温に関わるということが知られているので、サリチル酸と低温応答は結構密接な関わり合いがあるということを示唆しているのでしょう。

2011年2月21日月曜日

葉緑体膜のlipid remodelingが凍結耐性に関わる

Science 8 October 2010: Vol. 330 no. 6001 pp. 226-228
Freezing Tolerance in Plants Requires Lipid Remodeling at the Outer Chloroplast Membrane


Scienceの論文から。

植物は複雑な機構によって凍結に適応している。その適応過程には脱水によって引き起こされる細胞傷害を防ぐ役割も含まれる。脱水時における細胞膜の脂肪組成リモデリングは細胞膜へのダメージや細胞死に対処するための重大な機構である。SFR2 (SENSITIVE TO FREEZING 2)遺伝子はシロイヌナズナにおける凍結耐性に必須であり、葉緑体外膜のガラクトリピッドリモデリング酵素である。SFR2は豊富に存在するモノガラクトリピッドからガラクトシル残基を他のガラクトリピッドアクセプターへ転移する酵素である(galactolipid:galactolipid galactosyltransferase)。このことでオリゴガラクトリピッドとジアシルグリセロールが形成され、ジアシルグリセロールはさらにトリアシルグリセロールへと変換される。SFR2とトリアシルグリセロール合成酵素の働きによりモノガラクトリピッドは葉緑体膜から除去される。このことにより細胞膜におけるbilayer/non-bilayerの割合が変化する。つまり、モノガラクトリピッド型はcorn-shapeらしく、hexagonal structure IIを形成してしまう。これが形成されると膜構造が壊れる。モノガラクトリピッド型からオリゴガラクトリピッド型へ変換することでcylinder-shapeになり、bilayerを保つことができるそうである上述のようなSFR2を基盤とした機構により凍結時において葉緑体容積を変化させて、脂質膜の安定化に関わっている。

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